2020年の医療現場 (看護師視点エピソード)

 「全然ないんだって?」  実家からだ・・・「大丈夫だよ!」とだけ返しておいた。気になるんだろう。親の心配に感謝できるくらいには歳を重ねたけど、この時はうまく会話を繋げることができなかった。  あの時、実際に備品は足りていなかった。マスクも1日では捨てないように、と言われていた。また、感染者対応チームに入っていたけど、実家には伝えてなかった。「なんでこの病院が指定されたのかとか、なんで私なのか」という、行き場のない不安を抱えていた。現場には出ない役職付きの医師や、裏方で作業を行う医療スタッフを羨ましくさえ思っていた。  そんな時だから、指揮を執る医師から出た言葉に、ハッとさせられた。リスクのあるゾーンだけど、患者と直接接触するわけではない。看護師であっても、万全を期して対策を行っていても、リスクがゼロじゃない限り怖いものは怖い。でも、「みんなが安心して働ける状況を死守する」という決意のある言葉に励まされた。  「医療者は決死隊じゃないからね。正しく恐れて、一人ひとりが出来ることは限られるかもしれないけれど、みんなでこの状況を乗り切ろう」と笑顔でつなげてくれた。  私は、自分だけ戦っているつもりでいたのかもしれない。直接現場に出ない医師や医療スタッフも全力で業務に取り組んでいる。それぞれが覚悟を持って出来ることを行い、この状況に立ち向かっているんだ。  しばらくたった今でも家族には心配されるけど、院内感染対策は目いっぱいやっているんだよ、と細かく伝えるようにしている。最初は、「もう辞めたら?」と言われたけれど、今では「あなたはえらい!」と褒められるようになった。  いろいろなことを我慢しながら働く日々は続くけど、明日も普通に頑張ろう。 原作:メディカルノートより https://medicalnote.jp/nj_articles/200828-001-TH 横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター長 竹内一郎医師

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第2回医療マンガ大賞受賞作品決定 第2回医療マンガ大賞開催決定

医療の視点プロジェクトとは

医療の視点 YOKOHAMA

「医療への視点が少し変わることで、異なる気づきが得られ、行動につながる」をコンセプトに2018年10月から取組をスタートしています。民間企業等との連携や、市民の皆様の関心事にフォーカスすることで、より印象に残りやすく、伝わりやすい広報に様々な切り口で取り組んでいます。

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