2020年の医療現場 (医師視点エピソード)
テレビや新聞、ネットニュースは、新型コロナに関する報道で溢れていた。「感染症対策はしっかり行われているのか」「医療従事者のマスクなどの物資が不足しているのではないか」など、これまで以上に医療現場へ視線が向けられている。 私が担当するチームでも、日々感染症対策に追われていた。現在では、感染経路やそのリスクなども明らかになってきているが、当初は今以上にわからないことだらけだった。 「物資が不足してみんなを危険に晒すことはしない。現場の安全は守り切る」 一緒に働いている医療スタッフへ、繰り返しそう伝えた。医療従事者は決死隊ではない。できる限りの対策と環境を整え、医療という仕事に向き合っている。リスクはゼロにはならないかもしれない。そうだとすると、ここまでやっていたら安心だ、と自身が思える状態を維持することが重要だと確信していた。 この話は、だいぶ時間が経ってから、「あの時の言葉で前向きな気持ちになれました」と言われ思い出したことだ。当たり前のことが感謝されるくらいひっ迫していたのだな、と同じ医療現場で働く仲間の気持ちに改めて気付かされた。 さて、今から子供とのテレビ電話だ。送り迎えの道中が懐かしい。「一生懸命、戦っているんだよね!」って毎回言ってくれるのがほほえましい。頑張っているよ。 原作:メディカルノートより https://medicalnote.jp/nj_articles/200828-001-TH 横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター長 竹内一郎医師
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