管理栄養士視点

慢性期医療の現場を支える人々
supported by
メディカルノート・日本慢性期医療協会

 昔から食べることが大好きで、食に関わる仕事をしたいと思っていた私は、管理栄養士になった。今は、病院で働き始めたばかりの新人だ。  病院といっても、医療機能によって高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つに分類される。私の病院は、回復期や慢性期の分類で、急性期の治療が終わった後、自宅に帰ることが困難な患者さんや、症状が悪化した在宅患者さんを受け入れて治療やリハビリテーションを行い、在宅復帰を目指す役割を担っている。  私の病院は特にチーム医療に力を入れていて、医師・看護師・リハビリテーションスタッフ・管理栄養士・歯科衛生士・薬剤師などがチームとなり、地域の在宅医やケアマネジャー等と連携し、定期的にカンファレンスを行い、患者さんの在宅復帰のために取り組んでいる。私もチームの一員として、毎日患者さんが食事をしている様子を見に行きヒアリングをしたり、血液検査のデータを確認しながら、日々の栄養管理などをしている。  80歳を越える高齢で骨折し、手術を終えて転院してきたWさん。ご家族から食べることや料理が好きだと聞いていた。だが、不慣れな入院生活で小食になってしまった。好きな食べものを聞くと体の状態から提供が難しいものであったり、固さや柔らかさも好みに合わせられなかったりして、食欲に繋げられない。カルテにWさんの様子や聞き取りを行った内容を書き込み、調理の工夫をメモするが結果が出せず、栄養補助剤で調整する日が何日か続いた。  カンファレンスが行われ、Wさんに関して報告をすると、医師が歯科衛生士や薬剤師の視点からも意見をもらった。歯の状態や薬剤に現状では問題がなく、引き続き献立や調理方法を工夫し、在宅復帰しても良い栄養状態を続けられる方法を探るということになった。  それからも、Wさんになんとか食べてもらおうと「カンファレンスで見たWさんの家の写真にうさぎの雑貨が多かったから、柔らかくしたニンジンをうさぎの形に盛ってみよう」「魚は得意じゃないみたいだけど…サケフレークなら違うかも」と、試行錯誤を繰り返した。  Wさんは、「うさぎ、かわいい!」「そうね、サケフレークはおいしく感じるわ」と、少しずつだが食べられるようになっていた。それだけでなく「温泉卵が好きなの…」と食事に関して自分の考えを伝えてくれるようになった。リハビリの明確なゴールが決まってから、早く自宅に帰りたいと前向きになり、食事にも積極的になれたようだ。  ある日医師から、Wさんが「最近食べられる量が増えて、リハビリでも動けるようになってきたみたい」と喜んでいたことを報告された。私が「Wさん頑張っていたので、嬉しいです。」と言うと、医師は「もちろんそれもあるけど、カルテにあんなにびっしりと書かれた君のメモを見て、驚いたよ。君のサポートがWさんに頑張る力を与えて、喜んだ顔が見られたんだよ」と言ってくれた。  私が周りに助けられているように、私も患者さんやチームの役に立てたような気がしてうれしかった。まだまだ力不足だと思うことも多いけれど、これからも自分の力を皆の役に立てたいと改めて思った。

原作:Medical Noteより

横浜平成会 平成横浜病院 天辰優太医師

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コメント

大学病院、診療所、リハビリテーション病院など地域には特有の機能を持った医療機関があり、それぞれがさまざまな役割を果たしています。その中でも慢性期医療を担う病院は、超高齢化社会において地域医療を守るために欠かせない施設で、ぜひこれを機に多くの方に知っていただければと思います。入賞作品はメディカルノートにも掲載させていただきます。たくさんのご応募をお待ちしています。

日本慢性期医療協会 日本慢性期医療協会

コメント

慢性期病院に入院する患者さんの多くは解決すべき問題が複数あり、かつそれぞれが互いに関連しています。これらを解決するためには全てのスタッフが協力するチーム医療が不可欠であり、慢性期医療の難しいところであるとともに、やりがいであると言えます。今回の作品が多くの方に慢性期医療を知っていただくきっかけになればと思います。

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