患者視点エピソード

医療コミュニケーション 心房細動の治療 supported by メディカルノート・一般社団法人日本循環器学会

 本日8月10日は心臓(ハート)の日…語呂合わせか。と、昼休憩中にネット記事を眺めていた。不整脈がなんで心臓?と思いながらも、すぐできると書いてある脈のチェックをなんとなくやってみた。この記事にもあるように脈がばらばらな気もするけれど、素人だしよくわからない。さすがにこれだけの話で病院に行くのは、先生たちも忙しいはずだし、なんだか気が引ける。というよりも、忙しい仕事を休んでまで行く気にはならなかった。

 そこからしばらくたったある日、コロナ禍で趣味が健康になった家族が最近買った腕時計では、心電図もわかるらしい。そういえばと思って、その腕時計を貸してもらい、試しに測ってみたところ、脈がばらばらだ。家族では私だけだ。家族が検索した情報によると病院で調べてもらった方が良いらしい。以来、何日も病院に行かないの?としつこく言われて、ついに「来週には行く!」と。家族に宣言した手前、行かないわけにもいかなくなった。

 病院では、一通りの検査をされた。「すみません、家族に言われたので来たのですが、何もないですよね。ご面倒をおかけしました。」と言った私に伝えられた病名は、耳に慣れない「心房細動」だった。放っておくと脳卒中になる可能性があるらしい。脳卒中!テレビで見ていたあの有名人もかかった大変な病気だ。私が?まずは継続して薬を飲む必要があると説明された。帰りに立ち寄った薬局でも薬剤師の方から忘れずにお飲みくださいと言われた。

 それからは毎日薬をのみ、毎月病院に通っている。先生が「来月も待っていますね。」と言い、私が「はい、よろしくお願いします」と答える。ある種の締めの儀式のようだ。

 病院通いが続くある時、どうしようもなく仕事が忙しくて行きそびれてしまった。いや、行こうと思えば行けたのかもしれないが。何も変わらないし、元気だし、いいだろう。しかし、病院に行くたびにこぼしていたお金のことを言わないことを、目ざとい家族に気づかれた。せかされてやむなく病院へ。気が重い。どうせ先生にも怒られるのだろう、嫌になっちゃうな。と思いながら診察室に入ったら、意外だった。先生はこれまでと何ら変わらず「来月も待っていますね。」と言った。思わず「え、先生、怒らないんですか?」と聞いたら、「私だったら、小言を必ず言われる場所には、あんまり来たくないなと思っちゃいますから。」と。そして、「あの時、病院に来てくれたことを、私は本当に良かったと思っています。自覚症状のない段階で心房細動に気づけて治療に入れたのですから。それでは、来月も待っていますね。」そう言ってくれた。儀式ではない。先生は私のことを思ってくれているんだ、となんとなくわかった気がする。

「はい、来月もよろしくお願いします。」 



原作:Medical Noteより
https://medicalnote.jp/nj_articles/210803-001-TX
岐阜ハートセンター循環器内科 佐橋 勇紀医師

メディカルノート
一般社団法人日本循環器学会から

コメント

メディカルノート

脳卒中や心不全の原因ともなる心房細動は、早期発見・治療がとても大切な病気です。今回の医療マンガ大賞を通して、一人でも多くの方に心房細動を知っていただき、脳卒中や心不全を予防することにつながればと期待しています。入賞作品はメディカルノートにも掲載させていただきます。たくさんのご応募をお待ちしています。



一般社団法人日本循環器学会

心房細動は一般的な不整脈であり、年齢とともにその有病率が増加しています。高齢化が進む2050年の患者数は総人口の1%以上、約100万人と予測されています。動悸などの自覚症状がないことも多く、放置すると脳梗塞や心不全の原因にもなり得る疾患です。

早期発見や生活習慣病のコントロール、通院の重要性を漫画を通して、少しでも多くの方に知っていただきたいと思います。