医療従事者視点エピソード

がん対策 大腸がん検診 supported by 日経メディカル

 長年、かかりつけ医としてうちのクリニックを受診しているBさん。会社を退職したBさんの家族のCさんは、いつもBさんが受診されるときは車で送迎し、毎年秋にはクリニックに併設した健診センターで夫婦でがん検診を受けていました。

 昨年の春は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまん延し、厚生労働省や学会からの通知を反映する形で、健診事業を休止することに。その後、緊急事態宣言の解除を受けて健診センターも再開したのですが、Cさんは健診を受けておられませんでした。また、Bさんの受診の際に、Cさんの姿を見ることもなくなっていました。

 そんなある日、高血圧管理のために受診したBさんから、Cさんが便秘を訴えており、便に血が混ざったという相談がありました。なぜ本人が連絡してこないのかを尋ねたところ、コロナが気になって医療機関を受診したくないとのこと。さすがに便に血が混ざっているというのは無視できないので、病気の可能性があること、クリニックでは換気装置の増強や、飛沫防止スクリーンの設置、消毒液の設置と使用の励行などを進め、ディスポのエプロンを使ったり、感染症対策のための職員教育も実施してきたことなどを説明し、Bさんをつれてきてもらいました。受診すると、もともと大柄な方でしたが、私の記憶にあるよりも少し体重も落ちたCさん。大腸内視鏡検査を行ったところ、大腸がんを発見。すぐに日ごろから連携している基幹病院を紹介することになりました。幸運にも早期がんの状態で発見できたことからすぐに内視鏡的な処置を行うことができ、その後の経過も順調なようです。

 Bさんの受診の際に、Cさんが一緒についてこなくなっていることはスタッフから聞いていましたし、BさんからもCさんが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を恐れて引きこもっている話も耳にしていました。クリニックでは十分に感染対策は行っていますが、きちんとその旨を患者さんやご家族に伝えることができなければ意味が無いという学びを得ました。元気になって楽しそうに報告されるBさん、Cさんご夫妻とお話をしながら、改めてそのことを反省した次第です。



原作:日経メディカルOnlineより提供

日経メディカルから

コメント

新型コロナウイルス感染症の流行で、一般の方が何を怖がればいいのか判断できなくなってしまい、医療者と一般の方との距離が広がってしまったと感じています。マンガの力でぜひその距離を縮めてください。よろしくお願いします。